愛する時と死する時

ダグラス・サーク監督『愛する時と死する時』。こちらはトリミング版ながら褪色も少なくプリント状態が良いことが判っていたのでズルして友人より借り受けたビデオ、おそらく94年にWOWWOWで放映されたものを録画した日本語字幕つきで見る。


「わたしは幸せを信じています……。幸せは存在しなくちゃならない。じゃないと幸せを壊せないでしょ。完璧な幸せなんてへたっくそな詩みたいなもんですよ……。」(『サーク・オン・サーク』より)と語る破壊王ダグラス・サークであるが、戦後12年も経っているというのにロケ地であるベルリンの荒れっぷり、廃墟の連なりがすさまじい。CGではなくモノホンを破壊しているので迫力が違います。
ここでジャン=リュック・ゴダールさんに登場して戴きます。
「サークは『攻撃』のアルドリッチよりも見事に事態をなまなましく示す術を心得ているので、われわれは直接手に触れ呼吸するような気持になるほどだ」(竹内書店新社刊『ゴダール全集』より)。


ゲシュタポに投獄された元大学教授、やたら風格あるなと思っていたら原作者のレマルク(『西部戦線異状なし』など)なのでした。さすがポーレット・ゴダードマレーネ・ディートリヒを天秤にかけるだけのことはあります。


ではゴダールさんの戒め。
ダグラス・サークの巨大なミッチェル機が同時に位置を低くし、なめらかな支柱の動きで元通りの位置にかえったところを見なかったものは、何一つ見てはいなかったのだ。あるいは、美しさとは何かを知らない人間なのである」
ぜひそのショットを御覧にいらして下さい(トリミング版ですけど)。