ドキュ高等科上映会

アテネ・フランセ文化センター 15:00〜 約25名 オトコ6:オンナ4


 本日は映画美学校ドキュメンタリー・コース高等科修了作品上映会へ。入場無料とはいえ平日昼間から見られるはずもないと諦めていたら、仕事が早く終わり15時からのBプロから見ることが出来た。


 消えゆく街の喫茶店を描いた松久朋加さんの『Better Life』は踏み込みが足りず、いかにも未完成感が漂うのだが、なぜか好感が持てた。群馬県から上京した学生の寄宿舎を捉えた金井敦史さん『上毛学舎』は字幕での説明が多すぎた。お台場から水を介して浦賀へ至る、さとうち玲さん『Limicoline Developments』は確固とした方法論に基づいているので私が口を挟む余地なし。


 Neofest2006でneo賞第一位を獲得した名執泰輔さん『一緒ネ!(仮題)』はゲイのカップルを描いた作品なのだが、カミングアウトしていない当人たちからなかなか上映許可が得られず編集にも難渋していたのが、了承が得られてからは順調に進められたと、佐藤真監督の講評で明かされる。そのせいか何か爽やかさが浮き出ていると感じた。


 Cプロの丸谷肇さん『籠の中の緑』(107分)は渾身の力作。冒頭の、公園内の擂り鉢状に窪んだ一帯で遊ぶ子供たち−自転車で走り抜けたりする−を静かに捉えたシーンだけで傑作であることを確信した。現在日本では一般商業映画作品がほとんどヴィスタサイズであるのに対して自主作品はスタンダードサイズであることが多いのだが、この作品はスタンダードであることの必然を感じさせてくれた。息苦しいほどに狭いのだ。


 サム・ペキンパーの西部劇のようにシネスコで観たいと感じさせる光景を収めながら、鳥、植物、動物、子供たち、人間同士の価値観の対立、とウィリアム・フォクナーの南部がスタンダードサイズにぎゅうぎゅうと詰め込まれている。その舞台が凡庸、小市民の象徴的場所と私が思い込んでいた光が丘公園(大変失礼しました!)であるというのが衝撃的であった。そして60時間に及ぶ素材をたった3ヶ月で、しかも生業である仕事をしながら編集してしまった丸谷氏の豪腕ぶり。『鉄西区』のワン・ビン、『水没の前に』のリ・イーファン、イェン・ユィが同世代であることを意識した、という上映前の挨拶はダテではなかった。この作品がひとりでも多くの人の眼に触れることを願う。