不沈艦撃沈&野戦軍楽隊

フィルムセンター 13:00 約150名 オトコ7:オンナ3


この日、国立フィルムセンター大ホールでは13時から『不沈艦撃沈』が上映された(プログラムでは『野戦軍楽隊』)。場内はざわついたが何の事情説明もないまま上映は続く。すぐに映写が止まるだろうという予想に反して5分、10分、20分…。
そして物語が佳境に入った40数分後(全篇は96分)、突如上映は止まった。そして「不手際がありましたことをお詫びします」という旨のごく短い場内アナウンスが入って、すぐさま『野戦軍楽隊』上映開始。
上映終了後はまたしても具体的説明を欠いた、空疎なお詫びを繰り返す場内アナウンスのみ。責任者が出待ちをして帰る客に対して面と向かい頭を下げる行為はなかった。


以下推察を交えて書くので事実誤認があったら関係者の方にはご指摘・反論戴きたい。


今回のマキノ雅広監督特集その1、基本は年代順の上映なのだが、九部ある『次郎長三国志』を切り良く3本ずつ3日で上映するためだろう、年代が13番目の『不沈艦撃沈』は後回しにされ、14番目の『野戦軍楽隊』が繰り上げ上映なので、そのことによる単純ミスだと思われる。
そのこと自体を咎めたてようとは思わない。私が問題にしたいのはミスした後の対応である。


『不沈艦撃沈』というタイトルが出て場内はざわついたし、席を立ってロビーに出た人も(その後も間をおいて幾人か)いたのだから開始から間もなく誤りに気づいたはずだ。
40数分は映写室以外のどこかにあった『野戦軍楽隊』のプリントを運び込み、チェックを含めた準備に要した時間だと考えられる。
ではどうしてフィルムセンターはすぐに『不沈艦撃沈』の映写を止め、事情説明を行わなかったのだろうか?
13時からという時間帯、『野戦軍楽隊』の60分という上映時間に併せ場所柄からも、勤務中の昼食休憩をこの作品鑑賞に充てたお客さんもいるだろう。その人たちは何よりも現状に対する情報が欲しかったはず。


私には国立フィルムセンターが自らの過ちを認めること、および対処・決断を先送りにしているとしか感じられなかった。


保身の為に、ないがしろにされたのは観客だけではない。佳境に入ったところで突如ブツリと切られた『不沈艦撃沈』、そして到底気持ちの切り替えがつかぬまま上映が開始された『野戦軍楽隊』(両作品とも佐分利信が中心人物なので更に困惑は増す)、作品にとっても大変不幸な形だったと思う。マキノ雅広氏が存命中の監督であっても同じ対応をしていたのか、関係者に問い質したい。


私は民間(商業)劇場で少なからず上映トラブルに立ち会っているが、これほどお粗末な対応にあったことはない。
過ちに気づいたのなら速やかにどんな手違いがあり、どのくらいの遅延が予測され、どのような対処を行うのか説明し、それを了解できない客に対しては返金を行う、謝る時は責任者が自らの顔をさらして、というのが民の常識である。


以上、私の推察があっているのなら、フィルムセンターの上映責任者には一度国を離れ民間に下野(?)してサービスと常識を学ぶことをお勧めします。