最後の木こりたち

ポレポレ東中野 16:45 約40名 オトコ5:オンナ5


昨年のフィルメックスで見逃してしまったユー・グァンイー監督『最後の木こりたち』をポレポレ東中野の「中国インディペンデント映画祭」にて。


機械ではなく人力と馬力によって行われる伐採作業は、ごく柔らかく私たちのマナコを押し拡げる。
そしてそこで働くニンゲンとウマの汗と血の濃厚な匂いは、鼻腔の奥深くにじんわりと届く。
労働者の活力である食物と酒の、やはり濃密で苦い味は、甘く甘く喉元を浮上して来る。
ブッ太い木材とさらさらな粉雪が擦れ軋み合う音は、切なく耳に痛い。
そして聾唖者である労働者と寝食を共にする仲間たちの距離は、リーズナブルな域を超えて近い。


低賃金かつ過酷な労働環境なのだが、五感を刺激されっ放しなのでワーキングプアというよりどうしてもなく豊饒さを感じてしまい、正直エロスすら感じる。
「遊ぶように仕事をする」というエリック・ホッファの言葉を引いた中上健次、『紀州 木の国・根の国物語』、『地の果て 至上の時』の世界に通じるものがあるだろう。
9月1日(12:25)と3日(16:45)にも上映があるので是非どうぞ。


告知。
現代詩手帖」最新号(9月号)に佐藤雄一氏(俳優ではなく詩人)が松村浩行監督『TOCHKA』評を執筆しています。公開未定作品を採り上げるとはまた大層な無茶を働いたものだが、無謀こそが世の中を動かすのでお読みになった上、皆でTOCHKAコールを挙げましょう!