王子と呼ばれるその日のために

eigahitokw2005-06-09


『春の底』松村真吾監督 『パリによろしく』川井崇満監督 『アカイヒト』遠山智子監督『姫ころがし』寺嶋真理監督 『トワイライツ』天野天街監督
   pit北/区域 16:10 延べ15名ほど オトコ3:オンナ7(途中入退場があったため)


本日は北区の王子に行って参りました。
<王子に個性ある文化を 異彩を放ち続ける劇場に>
という心意気で新劇場をオープンし、
京浜東北南北線王子駅が王子様と呼ばれる>ことを
<本気(マジ)で考えています>ということで、
オープン企画で自主映画上映会が行われていたのです。


平日、火曜から木曜まででそんなとこで自主上映会やっちゃって、
関係者以外に客が来るのか? と素朴な疑問を抱き、
本気度数を計測したくなったのです。


地名としての王子と言えば野戦病院くらいしか思い浮かびませんが、
例の事件以来、王子様と言えば監禁男ですね。
<王子と呼ばれるその日のために>という企画タイトルに決めてしまった
スタッフ一同に心より御同情申し上げます。


しかし駅から降り立ってみると、
なんだか県内で3番目に大きな地方都市と言った風情で、
とても<王子様>という感じがしない。
もういいオトナの私がうすぼんやり突っ立っていたら、
無料アルバイト雑誌を配布されてしまって気付きました。
昼日中からぷらぷらしているいい若いもんが皆無なので、
ここがTOKYOとは思えないのです。
監禁以前にナンパすらままなりません。


それはともかく。
劇場は地下にあるのですが、その地下っぷりたるや立派なものでした。
何しろトイレに降りる階段には照明がなく、
スタッフが懐中電灯を手に誘導してくれるのです。
受付から席へ降りるのも鉄階段下ったりカーテン潜ったり、と迷路のよう。
私たちの<うら湯>も地下で行っているのですが、
この点では正直に負けを認めます。


映画上映専門館ではなく、オープン企画も、
ポエトリー・リーディングや山谷初男のライヴ(!)などが行われているので、
パイプ椅子に床は剥き出しのコンパネと、気取りとは無縁です。
ただパイプ椅子にはスポンジウレタンが2枚置かれていて、
お尻と背中に優しい配慮がされているのは好印象。


さてこのブログでは基本的に作品自体に対する批評はしない、
というスタンスですが今回はそうした機会の少ない自主制作作品なので、
ちょっと触れておきます。
劇場としての地下っぷりに拮抗し得ていたのは、
『アカイヒト』、『姫ころがし』、『トワイライツ』の3本。


『トワイライツ』はオーバーハウゼンメルボルン映画祭で、
グランプリを受賞したのも納得の出来栄え。
愛知県が金出しているとはいえ美術も凝ってます。
ただ図式制と参照項が透けて見えるのが惜しまれました。


『アカイヒト』の手抜きを知らぬ映像の作りこみには驚嘆。
字幕で見られた(「これはしゃれこうべ 肉はどこ?」など)
言語感覚の鋭敏さにまた驚嘆。
ただ「自主でこんなレベル、私には無理!」と感じさせてしまう、
余りの完成度の高さがニューカマーを引かせてしまうだろうことが、
難点と言えば難点です。


その点『姫ころがし』には関西人特有のテキトーさ(失礼!)が、
如何なく発揮されていて個人的には最も好きでした。
ラストの主人公のひと言には大爆笑!


プロ野球楽天なみの勝率しか期待していなかったのですが、
5本中3本当たりとはまさに驚嘆致しました。
<王子様>、ド本気です。


前情報がほとんどなくて得体が知れないと臆することなく、
みなさんも自主映画上映会に足を運んでみて下さい。
安い(今回は前売700円、当日1000円)・早い(上映時間が短い)・
イロイロの三拍子揃ってます。
間違って大吉を引いてしまった時の喜びは格別で、
このご時世にかなりゼイタクな時間の使い道だと思います。


そう言えば映画美学校でも9月の第一・第二週に、
卒業生の作品を集めた美学校映画祭やるなあ〜っと。