風の絨毯

 上映会などやっていると資料がどんどん溜まっていって部屋が狭くなる一方。まず場所を取るVHSテープを何とかしようと一ヶ月前にHDD付というかVHS付DVDレコーダーを購入し、HDDに移したものから処分していくという作業を行っていた。そのレコーダー、3日前からHDDが立ち上がらなくなった。サービスセンターに問い合わせると「無料で修理はするがデータは消える」とのこと。涙。私の夏と貴重なVHSテープを返してくれ!


 私の周りには捨てる神しかいないのかと、かなり凹む出来事であったが、そんな時に勇気づけてくれたのが益田祐美子著『私、映画のために1億5千万集めました。』。一瀬隆重プロデューサーの『ハリウッドで勝て!』を読んだが、へえと思うところはあっても実用性はほとんどない。そういや以前に買ったまま本棚に眠っているプロデューサー本があったはず、と取り出したのがこの本。何しろ装丁に品がないので「主婦がデイトレで一億儲けました」みたいな内容かと思ってナメてたんだが、読み始めたら無類に面白く、そして役に立った。


 映画のことをほとんど知らない、どころか英会話を学んだり、小学生の娘に同行してパソコン教室に通うところから始まった、素人主婦が本当に日本・イラン合作の『風の絨毯』(カマル・タブリージー監督)をエグゼクティブ・プロデューサーとして完成させてしまう、という内容。次々襲い掛かってくるトラブルがまたすさまじく、01年の同時多発テロ、主役降板により二度も直前にクランクイン延期とか、イラン側による契約書の改竄とかイランに到着してからビザ切れに気づくとか、もう無理だろ〜という局面を粘り強くかつユーモラスに乗り切っていく。困っている方に強力にオススメ。一気に読み終え、その日のうちに作品もビデオで鑑賞いたしました。