乾杯!ごきげん野郎

ラピュタ阿佐ヶ谷 19:00 約50名 オトコ8:オンナ2


 本日よりラピュタ阿佐ヶ谷にて開幕の「瀬川昌治の乾杯ごきげん映画術」。順序は逆になるが上映後に瀬川昌治監督、世志凡太さん(『乾杯!ごきげん野郎』出演)、高崎俊夫さん(編集者)によるトークショーがあり、そこで来月くらいに瀬川昌治監督の自伝(+インタビュー?)本が出版されると発表された。出版が特集上映に先行したほうが親切だとは思うが、そこは色々事情があるのでしょう。ともかく良い機会だと思うので、瀬川作品を未見の方はもちろん、すでに御覧の方も復習をかねて見直されると良いのではないでしょうか。

 もうひとつ、昼間から見に来ていた友人・知人より異口同音にデビュー作『ぽんこつ』(60年)は素晴らしい、絶対観るべき! との強力プッシュを戴く。ひとりの方によると『アデュー・フィリピーヌ』(ジャック・ロジエ監督・61年)に匹敵するとのこと。そりゃ見ずにはおられん! 上映は14日(土)まで、10日(火)までは15:00、11日(水)からは13:00の回です。


 瀬川昌治監督というと、おそらく1990年前後にアテネ・フランセ文化センターで特集が組まれてそれに通ったのを思い出す。と言っても作品何を観たのか思い出せないようなテイタラクではあるのだが、『馬喰一代』に奇跡のように美しいカットがあったはずで、今回上映での再会を楽しみにしている。


『乾杯!ごきげん野郎』はアテネではなく大井武蔵野館で見たのだが、トークで瀬川監督が「新幹線と携帯電話がない時代じゃないと成立しない話」と仰っていた通り、その遅さと間接性が魅力の一品。遅さについてはエノケン榎本健一)の起用でも分かるように、撮影当時でさえ意識していたように思う。つまり次に何をやるか十分予測はつくのに、それでも笑わされてしまう芸の深さ。自動車での追っかけシーンでも、その射程はサイレント映画まで伸びていると感じた。間接性については寝たきりの少女がいかにして外を見るか、夢を諦め帰郷の途についたジャスバンドの面々がいかにして自分たちの成功を知るか(後者についてはブラジルのネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督『人生の道』(79年)まで届いている)、ぜひ実際に映画を観て味わって欲しいと思う。