上映作品あらすじ改訂版

21日に上映したダグラス・サーク監督作品のあらすじ改訂版をお送りします。
『僕と祭で会わないかい』はhttp://www.tcmdb.com/index.jspを基に翻訳したもので、拙い出来ですから英語堪能な方は直接TCMを御覧戴いた方が良いです。


コチラhttp://www.athenee.net/culturalcenter/DATABASE/cinedate/t_a/t/tarnishedangel.htmlを了承を得て転載したのですが、何箇所か誤字・誤記を含んでいました。チェックを怠ったまま配布してしまった私が悪いのですが、訂正版をこのブログに掲載するのも問題があるので、こちらはご容赦下さい。


あとウチの上映会には何の関係もないのですが、サークの43年度作品をやはりTCMを基に翻訳・加筆してみたので添付しておきます。こちらは予告なく削除する可能性が大いにあります。それではどうぞ。


『僕と祭で会わないかい』(『見世物市で会いましょう』)
Meet Me at the Fair(1953年・87分)
1904年、ミシガン州のキャピタルシティへ向かう途上、怪しげな薬を売り歩くドック・ティルビー(ダン・デイリー)とイーノック・ジョーンズ(ベンジャミン・スキャットマン・クローザース)は十歳の男の子タッド(チェット・アレン)を馬車に乗せる。少年は孤児院から脱走して来たのだった。タッドはすぐにドックのことを慕うようになる。ドックは武勇伝をデッチ上げるうちに熱くなって自分自身もその話を信じてしまうような男だった。


一方、孤児院協会委員のゼレルダ(ダイアナ・リン)はタッドの孤児院を査察に来たのだがあまりの惨状に驚く。しかしタッドが詐欺師と一緒にいるのを目撃し、まずは少年を救うために出発するのだった。その孤児院の院長スウェイル夫人は汚職仲間のボスであるマッコイにゼレルダが孤児院の改革に乗り出すだろうと報告する。マッコイはゼレルダの婚約者でうだつのあがらない地区法廷代理人のコアに会う。マッコイはコアがゼレルダを抑えられなければ再選させないと脅す。


ゼレルダはドックが怪しい薬−実はプルーン・ジュースと酒、薬草を混ぜたもの−を売っているところを発見する。ドックはタッドはここにはいないというがゼレルダはそれがウソであると見抜き、保安官に通報して少年を救うと宣言する。ドックは彼女の火のような情熱に魅かれたものの、ワゴン馬車をまとめて大急ぎで逃げ出す破目になる。


激しい雨が降り出した時、タッドはドックがイーノックに向かって町を離れると収入源を失うことになってしまうと話しているのを漏れ聞いてしまう。タッドは彼らのお荷物になるのが嫌でワゴン馬車から抜け出すのだが、すぐに荒れ狂う川に落ちてしまう。悲鳴を聞きつけ少年を助け出したドックは、濡れた衣服を乾かしながら少年の天使のような歌声を聴き、ひらめく。それはキャピタルシティへ向かい保安官に正々堂々対面するというものだった。そこにはガールフレンドで歌手のクララがいる。タッドを少女に変装させ自分たち二人と離して彼女の楽屋にかくまうという作戦だ。クララは渋々引き受けることになる。


クララはドックに向かい、腰を据えて結婚するよう迫るがドックは首を縦に振らない。彼は友人で地方新聞記者のビルを訪ね、タッドの孤児院について告発記事を書いてくれるように頼む。ビルはすぐさまマッコイの悪事を調べ上げる。マッコイは孤児院の資金を横領していたのだった。怒ったマッコイは記事を差し止めタッドを返さないと、誘拐の罪で告訴すると脅すがドックは拒否する。


ゼレルダがタッドの親類で、スプーナーという夫婦がこの地に住んでいるとドックに伝え、ドックはタッドがその夫妻の養子となることに同意する。ドックがタッドに哀しい別れを告げたその時、マッコイとコアが踏み込んできて「親類」役を清算し、タッドを捕らえてドックを町から追放する。ゼレルダはコアを激しく非難し、去ろうとするドックに話しかけようとするが、彼女こそ詐欺師だったのだと誤解したドックはそれに取り合わない。


その夜ドックとイーノックはタッドを奪い返すために孤児院に忍び込む。彼らはタッドを見つけ出せなかったのだが心優しいイーノックはそこにいた11人の少年たちをワゴン馬車に乗せてしまう。ドックは彼らをクララの元に連れてゆく。一方コアは生死に関わらずドックを捕らえるよう保安官に告げる。タッドを救出したゼレルダは少年をドックの元に連れて行き、共に闘うことを誓う。


彼らはクララの劇場で行われる知事の選挙パーティーに出席する。ドックは歌手に変装し、彼らの準備したスライドを孤児院での使い込みを示すものにすり替える。驚く観客たちに向かって、ドックが地区政党の汚職を告発し、ゼレルダがそれを補足する。スプーナー夫妻の偽造養子縁組書類がマッコイの重罪を証明する。知事はコアとマッコイを免職にし、新しい改良された孤児院の設立を約束する。


数日後、ゼレルダはドックに会う。ドックはまた武勇伝を語りだすのだが、彼女はそのホラ話にすっかり夢中になってしまうのだった。


ヒットラーの狂人』
Hittler’s Madman(1943年・84分)


1942年、チェコスロヴァキアボヘミア地方のリディツェ村。村に住むハンカ一家は代々敬虔なキリスト教徒。豊かな農作を誇る村には現在ナチス・ドイツが駐屯している。


リディツェ村にこの村で生まれ育ったカレル(アラン・カーティス)が英軍の飛行機からパラシュート降下してくる。戦争が始まってからは英国で生活していた彼はハンカ家の母アンナから、英国との繋がりが原因で自分の両親がドイツの強制収容所に送られたことを知らされる。家に帰れないカレルは恋人でアンの娘であるヤルミラ(パトリシア・モリソン)を森で待つ。その森は子供時代に彼らが遊び場としたところだった。
小学校教師であるヤルミラはカレルに再会できたことを大いに喜ぶ。彼はチェコ人民にレジスタンス運動を広める使命を帯びていることを伝える。ヤルミラはカレルの身の安全を心配するが、彼は希望と勇気を持つようにヤルミラを励ますのだった。


ヤルミラがカレルを隠れ家として洞穴に連れて行くが、隠遁生活を送る狩人のネプモク(エドガー・ケネディ)に見つかってしまう。初めはカレルを通報すると脅すが、やがてネプモクは秘密集会のために村人たちを集めてくれる。その中にはヤルミラの父親ヤン・ハンカや坑夫のヤネクもいた。カレルは彼らにサボタージュによるナチスへの抵抗を呼びかけるが、ヤンは警戒と忍耐だけが必要なのだと主張する。カレルは男たちの説得に失敗してしまうがヤルミラは彼の運動の支えとなることを約束する。


一方街では率直に意見を述べるアントンがゲシュタポに連行されてしまう。彼の妻であるマリアはナチ・リディツェ区長であるバウアーに助けを求めにゆく。バウアーのうわべの保証に関わりなく、プラハゲシュタポの活動を統括していたナチス親衛隊No.2ラインハルト・ハイドリヒ(ジョン・キャラダイン)はアントン処刑の書類にサインする。「死刑執行人」(=The Hangman 註:この作品の仮タイトルは「Hitler’s Hangman」だった)として知られたハイドリヒはサボタージュの波を止めるためには、チェコスロヴァキアの知識人を抑えなければならないと思い至る。ハイドリヒは大学を閉鎖させ、美貌の女子大生を集める。ドイツ将校の慰安に仕えさせるためだった。その中にはヤネクの娘であるクララもいた。ハイドリヒは自分に仕える者としてクララを選ぶが、クララはそうなることより死を選択する。クララはバスで戻らず、アントンは棺で帰ってきた事態に村の住人たちは蜂起を決意する。クララの父ヤネクは彼の人生の多くの時間を費やした坑道をダイナマイトで爆破することにより、サボタージュに初めてコミットする。


註:sabotageは日本での用法と異なり怠業を意味しない。sabotageとは生産設備や輸送機械の転覆、障害、混乱や破壊を通して敵、圧制者または雇い主を弱めることを目的とする意図的な行動を指していう言葉=破壊活動。またテロリズムと異なり人員に損害を与えることを目的としていない<以上主にWikipediaによる>。ちなみに同じハイドリヒ暗殺事件を扱ったフリッツ・ラング監督『死刑執行人もまた死す』で呼びかけられていたのはslow down=怠業。


子供たちに音楽のレッスンをする娘ヤルミラに、ナチは集会を禁じているから波風を立てるような真似をするなと注意した父ヤンも揺れ始めていた。ヤンは司祭に助言を求めにゆくが耐えろと諭される。その翌日、厳粛なアントンの葬列(?)にハイドリヒたちが車で突っ込んで来た。集会は禁じているはずだと司祭に絡むハイドリヒに割り込むヤン。司祭は挑発に乗るなとヤンを諫めるが、ハイドリヒが聖布でブーツを拭う行為に至り、抑えきれなくなった司祭が銃殺されてしまう。


区長バウアーの元に電報と翌朝5時から6時の間にハイドリヒが町を通過するので戒厳令を敷けという指令が届けられる。電報はふたりの息子がロシア戦線で戦死したことを知らせるものだった。落胆した区長の妻は教会でヤン・ハンカにハイドリヒの情報を漏らす。ヤンはカレルとヤルミラのいる洞穴に赴き、ハイドリヒ暗殺計画を打ち明ける。まずヤルミラが自転車でハイドリヒの車のスピードを落とし、カレルが軽機関銃で撃ち、ヤンがダイナマイトで止めを刺す。計算外の後続のオートバイをネプムクが仕留めることにより暗殺計画は遂行された。


だがハイドリヒは瀕死の重傷を負ったものの死には至らなかった。ナチス親衛隊No.1のハインリヒ・ヒムラープラハにやってくることが伝えられた将校会議で暗殺者たちを引きずり出すため人質を取ることが決定される。ヤンはその一人として収監されることになる。明日にでも解放されるだろうという村人の言葉を頼りに、疲れきった妻には事実を告げずちょっとした外出とのみ伝えて家を後にする。一方区長バウアーは妻に会うこともコートを着ることも許されずにナチに連行される。


山中を逃げるカレルとヤルミラはドイツ軍に発見されてしまう。銃撃の末カレルは敵を仕留めるが背中から撃たれたヤルミラは死んでしまう。ヒムラーの見舞いを受けたハイドリヒは痛み止めのモルヒネによる幻覚の中で自らの生への執念と来るべきドイツ軍の敗北を告げて絶命する。
ヒムラーの名によりリディツェ村への出入りが禁じられ、日曜日に村人全員が広場に集められる。村人たちに成年男子は銃殺、女性と子供は強制収容所送りが告げられる。それが執行されるさまを収監されたままのヤン・ハンカはなすすべもなく見つめ、更に焼き討ちが加えられた町の建物と共に崩れ落ちてゆくのだった。