人情紙風船

『人情紙風船』にご来場戴いたみなさま、ありがとうございました。
今週はわずかに200名に届くことができませんでした。
雨の中をお越し戴いた方々には本当に感謝いたします。


さて明日からはいよいよ特集ラストの作品、
山中貞雄脚本、黒澤明潤色、杉江敏男監督、三船敏郎主演の『戦国群盗傳』(59年)です。
長屋から雪や雨の降らない荒野へ飛び出した、今までの3本とは趣を異にしたカラっとした作品です。
脚本のみ担当で監督しなかった作品だけに、逆に山中が到達できなかった世界が見えてくると思います。
また未ソフト化作品で、上映機会も稀なのでぜひご来場下さい。


もともと山中がホンを書いた『戦国群盗伝』は鳴滝組の盟友である滝沢英輔のためで、
滝沢監督版(37年)もごく一部消失していますが、プリントは現存しています。
河内山宗俊』と『人情紙風船』でお馴染み、前進座が出演しています。
三船敏郎中村翫右衛門鶴田浩二河原崎長十郎の役)


当然そちらのオリジナル版を上映するだろうと私は予測していたのですが、
杉江監督版(59年)の参考試写をしたら、西山洋市監督は躊躇することなくコチラを選択。
西山さんが意図する「役に立つ」がよりクッキリ立ち上がっているのだと思います。
滝沢版はVHSですがソフト化されており、新宿や渋谷のTSUTAYAにあります。
ご興味ある方は、どうぞ見比べて下さい。


黒澤明は滝沢版の助監督についており、当然山中とも面識があった。
(「黒澤明の語る山中貞雄」は『映画狂人、神出鬼没』に所収)
杉江敏男監督は大学生の時、山中にインタビューをしている。
縁の浅くないこの二人がいかに山中を受け継いだのか、ぜひぜひご覧下さい。