浮気雲

VIRGIN CINEMAS Art 21:25 約100名 オトコ4:オンナ6


ツァイ・ミンリャンといえども一般公開は危ういかも(続く)。


では続けます。話は2年前にさかのぼります。
同じ東京国際映画祭ツァイ・ミンリャンの『さらば、龍門客桟』が上映されましたが、未だ公開は果たされていません。
東京を含めて日本の上映環境はここ数年で急速に悪化しているので、もはや<ツァイ・ミンリャン>という名前があれば公開される、というのどかな時代は幕を閉じました。
そこで仕事終わりに毎晩のように六本木に向かうという忙しい生活になってしまうのです。


かような心配をしながら見始めたのですが日本のAV女優=夜桜すもも嬢が出演しているし、ミュージカルシーンもあってポップだし、R−18指定はかかるだろうけど今回は順調に一般公開されるだろうと思っていました。


ところが。う〜ん、ラストシーンです。
何か日本の映倫に対する挑発ではないかとすら思えるのですが、冒頭同様性器を直接映している訳ではないので修正されることはないと信じます。
「いや〜、せつないよね〜」と見終わった後、友人と話したのですが、この<せつなさ>は決して万人に伝わるものではない。
むしろ拒絶反応を示す人の方が多いだろう、という点まで一致してしまいました。
ネタバレになってしまうのではっきり書けないのがもどかしいのですが、ピンク映画に特有の、暴行とも受け取れる振る舞いによるものです。


さて外国作品が日本で公開されない場合については、まず配給会社が権利を買わなかったというケースと、もうひとつ、配給権は買われているのに映画館が上映しない、があります。
どこかの飲み屋で漏れ聞いた話によると『さらば、龍門客桟』は後者のケースらしいです。
2年前に見た者としては確かに退屈な側面もあるので、保留する劇場サイドの判断も理解できる。
ただ現在では海外版DVDが容易に入手出来てしまうので、時間が経てば経つほど公開は厳しくなってしまう。
従って配給会社は動員が難しいと想定される作品には手を出さなくなり、口当たりのいいものばかりが公開される、ということになります。


先にコメント欄に記した<スローライフの提唱>とはこのことで、観客側も海外版DVDにすぐ手を出さずにちょっと待ちましょう、という次第です。
しかしDVDでもいいからどうしても見たい! という人を止めることは出来ないし、第一配給会社が買い付けているかどうかなんて、関係者が集まる飲み屋に盗聴器でも仕込んでおかない限り、なかなか把握できるものではない。


う〜ん、どうしたものかと私たち「オトコとオンナの映画秘湯」もない知恵をしぼっているところです。
ところで、かなりの映画好きでも上映環境の悪化に気づいていない方が多い。これはじわじわゆっくり悪くなっているから変化が判りづらいのでしょう。でもそうこうしているうちに手遅れになってしまう。


ツァイ・ミンリャンの名前でも弱いというなら、これはもうあの方にお願いするしかない。
個人的にはジャン=リュック・ゴダール監督の35ミリ長編最新作が日本公開されなくなる日を待望しています。