LOFT

高崎市文化会館 15:40 約700名 オトコ5:オンナ5


高崎映画祭で上映された黒沢清監督『LOFT』について、
駆けつけた友人の談話を昨日私がまとめたのですが、
拙文が気に入らないようで速攻本人からリポートが届いたのでご報告いたします。


4月9日(日)第20回高崎映画祭クロージング作品『LOFT』を観に、阿佐ヶ谷から2時間(運賃片道1,890円)かけて高崎に行く。高崎駅西口から徒歩20分で上映会場の高崎市文化会館(座席数701席)に着く。到着時間は14時30分。会場入り口には、15時10分から当日券の販売、15時25分に開場との案内。前売券はすでに購入しているので、会場と道路を挟んで真向かいにあるデニーズで腹ごしらえ。13時05分に店を出て文化会館入り口に向かうと既に長蛇の列ができている。列の最後尾につき待つこと5分程で開場。会場は701席とかなり広いが、舞台の奥行きが10メートルぐらいありそうだったので画面が大きくても大丈夫だろうと考えて一番前の席に座る。開映10分前で入りは6割ほどで満席になるのか心配したが終映時に振り返って見ると老若男女で満席になっていた。


上映の前には黒沢清監督が舞台挨拶を行い、『LOFT』は日本国内では関係者30人程しかまだ観ていない映画であること、公開されない映画は存在していないも同然で、高崎映画祭で上映してもらい少なくともこの会場に来ている人たちに観てもらえることを感謝しているというようなことを言っていた。上映後には高崎映画祭の責任者による黒沢監督へのインタビュー。まず、責任者から高崎映画祭20回目のクロージング作品として『LOFT』を絶対に上映したいと配給会社に何度も交渉してやっと上映が実現したこと、映画祭関係者も高崎に映画が届いてやっと深夜の試写で見ることができたことなどの話があり、監督に話を聞き始めた。話は、今回はハイビジョンと一般で使われているような小さなビデオカメラの2台で撮影したという話題から始まった(上映は35ミリフィルム)。映画の主要な舞台となる隣接した建物については、茨城県中谷美紀が住むことになる屋敷を見つけたが、さすがに隣に都合よくビルは建っていなかったので、豊川悦司がミイラを運び込むことになる隣の建物は美術部により張りぼてで造られたという裏話を披露した後、撮影当日にロケ隊が着いた時には前日の台風のため倒れていて呆然としてしまったと悲惨な話に振っておいて、しかし、2〜3時間で元に戻ってほっと胸をなでおろしたぐらい張りぼてナンデスと黒沢監督、観客の笑いを取っていました。その美術ですが美術監督映画美学校の第一期生の女性だそうです。撮影も女性で芦澤明子女史。ピンクでデビューして、成人映画以外の初長編映画は『ファザー・ファッカー』で、最近では、『UNLOVED』、『オーバー・ドライブ』なども撮影しています。監督によると芦澤さんとは一度一緒に仕事をしたかったそうで、今回の撮影ではビデオで撮影することではじめて実現できる少し滲んだような画調を表現してもらえたと喜んでいました。『LOFT』の内容に関しては、もうホラーは作りたくないという気持ちと最高のホラーを作りたいという気持ちの分裂した感じが画面にでてしまっている。また、観客に対してとても不親切な映画であるとも言っていました。また、はたして安達祐美は何回死んで何回蘇ったのでしょうと笑っていましたが、わたくし、え!蘇ってたの、亡霊じゃなくて!?と一瞬思ってしまいました。


そういえば映画のある時点からは、この映画『陽炎座』と似ているという感じが沸々と湧き上がって来たのを思い出しました。もしかしてここに映っているのは既に地獄の風景なのではないかと。編集は挑発的で、寄りのカットから引きのカットへの繋ぎをわざとイビツにしているため時空が一瞬ズレタような感覚に襲われ、ワンシーンで質感の違う2台のカメラで撮った画面をアットランダム(というほどではないが)に繋ぐことで客観的な視点と(霊の?)主観的な視点が混在したような異様な効果を出していました。接吻やミイラや安達祐美やクレーンや焼却炉や森や沼や大風や泥やかっこいいセリフと音楽などなど見所聴き所満載ですが、主人公と共に茫然自失へと追いやられること必至です。そういえば、『CURE』のように劇中に数十年前のフィルムに写った映像が出てくるのですが、それがどのように物語に絡んでいたのかいまだに分かりません。そのほかの出演者は西島秀俊鈴木砂羽大杉漣加藤晴彦。上映時間は1h55。


リポートは以上です、多謝。鈴木砂羽はちょっと意外な感じを受けました。
美術監督映画美学校一期生の女性って誰なんでしょう?
頼りにならなくて申し訳ありません。判明次第追記いたします。


さてさてやはり東京在住なのにニューヨークのFILM FORUMの会員という別の友人もからもたらされた情報。
4週間に渡って行われたドン・シーゲル特集から、今度は先日亡くなったリチャード・フライシャー監督作品6本を含むB-NOIR特集、5月5日から6週間です。