エドワード・サイード OUT OF PLACE

アテネ・フランセ文化センター 18:30 約40名 オトコ4:オンナ6
通常とは客層異なり、年齢層もやや高し


佐藤真監督『OUT OF PLACE』、<アテネ・フランセ文化センターにて待望のロードショー>とチラシに掲載されているのだが、某所は商業劇場ではないはず。これならという表現も可能ということで、何はともあれメデタシ。メデタくないのはアテネの会員証提示しても割引はなくキッチリ当日料金1800円取られること。皆様お気をつけて。


ここからはネタバレを含みます。
映画が始まるや「ここは軍関係者に撮影を制止されるかもしれない」と囁かれ、案の定警告を受けるのだが画面は途切れない。つまり予めカメラを2台回していて注意を受け入れた振りをして1台を止め、もう1台で隠し撮りをしていた、ということだろう。
そして中盤すぎ、やがてパレスチナ人とイスラエル人が共存しているという街でのこと。ひとりの男がいかにその<共存>が欺瞞かを暴きたてる。そのシーンではカメラを据えた大津幸四郎がバックに映り込んでいて、カメラが複数存在することを示している。そしてこのシーンは決して意外ではない台詞でカットされる。
リチャード・フライシャーが用いたような分割画面ではなく、佐藤真監督は2カメラ1映像を指向してみせたのだと思う。もちろんそれは不可能で結局どちらかのカメラ映像を選択することしかできない。


ラスト。サイードの追悼式典が行われたパレスチナの音楽院、妻がある明るさを示しながら盟友であったバレンボイムにスピーチを引き継ぐ。この音楽院はサイードの死を契機にバレンボイム音楽院からエドワード・サイード音楽院に改名している。バレンボイムはここでは画面に登場せず、別の男の姿で映画は幕を閉じる。
映画作品名『OUT OF PLACE』とはサイードの著作、邦題『遠い場所からの記憶』から採られている。サブタイトル「Memories of Edward Said」はやはり同著の「A Memoir」に呼応し、佐藤真監督作品『阿賀の記憶』とも響きあっている。
佐藤真氏は1+1=1という共存ではなく、ひたすらに先行者を引き継ぎ、響きを広げることによる共生を目指すように感じられた。