まだ楽園

シネマ・ロサ2 21:00 約25名 オトコ6:オンナ4 若かった


劇場公開を果たした新鋭・佐向大監督『まだ楽園』。主人公の青年が恋人ではなく友人を伴い車で故郷を訪れる。自転車で彷徨う、やはりオトコ二人組や若い人妻との遣り取りを、そこはかとない笑いで描きながら、やがて母の死と父に対峙するというもの。


ジム・ジャームッシュ監督『ストレンジャー・ザン・アラダイス』など先行作品が容易に想起され、一緒に見た友人たちも既視感を口にしたが、登場人物たちによって何度も言われる「一回言えば判るよ」、「二度は言わないからな」によって、そのことに監督は自覚的なのだと思われる。むしろ主人公の父に対する行為でも示されるように、判っていても反復せずにはいられない、オトシマエをつける痛みを登場人物たちが担わされているように思う。


有名な役者が出演していない、どころか演技経験ほぼゼロの素人ばかりらしいのだが、決して上手ではない、そのことがひとつの味になっているし、冒頭のサービスエリアで怪しい中年ヒッチハイカーが口にする「郡山」という地名によって、かなり首都圏を離れていくように感じてしまうが、訪れる先は監督の出身地である横須賀に過ぎない。郡山が所在する県を巡って遣り取りが男三人の間で交わされるのだが、一番はじめに否定されるのが実は正解であるなど、なかなかしたたかで一筋縄には行かないのだ。


ただ大きなスクリーンに耐えられる画質ではなかった。単にDV撮影だから、ということではなく同時上映の短編『ralph』はきれいだったのでカメラのグレードによるのだろう。
何よりもっと動員がないと寂しい。boid、nobodyがバックにつき、黒沢清がチラシにコメントを寄せてるんだし。監督本人が映画宣伝会社出身(忙しいはずなのに、よく映画作る時間があったものだ)なんだし。金曜の夜なんだし。友人たちと上映後、居酒屋を探したら、やるき茶屋を始め、立て続けに3,4軒満席で入れなかったんぞ、と。