1st cut Aプログラム

ユーロスペース1 21:10 約100名 オトコ5:オンナ5 若い


1st cut 新作プログラムA初日。他人事ながら宣伝告知期間が短いので動員を懸念していたが立ち見まで出ていた。まあ土・日・月の3日間レイトなので初日が一番入るのでしょうが。


作品は大澤未来・岡本和樹監督『帰郷−小川紳介と過ごした日々』、小嶋健作監督『底無』、松浦博直監督『バオバブのけじめ』の3本。


『帰郷〜』は小川紳介監督に対して蟠りを持っていた飯塚俊男氏(当時助監督)を軸にしているのだが、やはりただならぬ蟠りを持っていると推察される、たむらまさき・伏屋博雄両氏の元に赴き、重厚長大な三部作に仕上げて小川氏に拮抗して欲しいと思う。


『底無』は主人公=妻が出産を控えた30歳前後の塾教師、教え子の男子中学生、その親である40歳代の父親、主人公の元教え子である男子高校生、隣人の子供=小学生と重層的な世代間齟齬の描写が秀逸だった。訪問した先の中学生の自宅の造りも興味深い。


上映順序に因るのだろうか、『バオバブのけじめ』は『底無』に比して関係性、人物設定に平板さを感じてしまった。しかし迂闊ながらエンドクレジットで類型的と感じた父親を映像作家の山崎幹夫氏(フェイクが得意技のひとつのミッキー!)が演じていることに気づき、パンフレットの大工原正樹氏の文章中の「漫才」、「珍道中」に接し、『底無』の重層性がともすると不可視なものに対し、まさにバオバブは天地逆転、スケールの違い、といった眼に見えるもの勝負(けじめ)に出ていたのだと気づく。またパンフレットに掲載されている万田邦敏氏の文章により『底無』の重層構造、及び私個人の印象の限界性に気づかされる。


ところで発表の場として選択されているのが上映施設完備の映画美学校ではなくユーロスペースであるのは決して単純ではない、ともすれば不可視の重層性があるはず(以下後日、記す予定です)。