海鳴り街道&大菩薩峠 甲源一刀流の巻

フィルムセンター大 19:00 約180名 オトコ7:オンナ3


さてさて始まっておりますよ、FCでの山中貞雄特集。
私が観たのは山中が応援監督を務めた『大菩薩峠 甲源一刀流の巻』(稲垣浩監督/35年)。
冒頭より『百万両の壺』でお馴染み安坊が案内役を務めてくれて感激。
本編136分のところ、今回上映されたのは77分とほぼ半分くらいのヴァージョン。


ということでまず私が嬉しかったのは山中貞雄が戦死しなかったら結ばれたかも知れない深水藤子さんが存分に拝見できたこと。
欠落版では主演の大河内伝次郎より登場シーンが多いと思えるほどで、可憐な少女時代から大人の女性になる一歩手前までが堪能できます。
これとは逆の意味(?)で楽しかったのが鳥羽陽之助氏!
現存する山中作品では高勢実乗氏とのコンビにてコメディリリーフとして登場するのだが、ここではピン(作品には高勢実乗氏も出演しているのだが私は認識できませんでした)にて特殊メイクを施しての大暴れ!


さあ肝心の山中が演出したとされるシーンについて。
確証ある奉納試合については編集の問題もあって、う〜ん…。
恐らく演出したであろうと思われる大河内伝次郎の道場破りのシーンも『百万両の壺』に比べると、うぅ〜ん…。
ここはボンクラな私ではなくお酒を召した西山洋市監督に何でも訊いて下さいと逃げを打ちます。


終映後、FCスタッフに「前半が良いのに何で欠落しているんだ」と問うているお客様がいました。
ご年齢からして完成当時に鑑賞したのではなく、別のヴァージョンを御覧になったことがある様子。
当方チキンにてお話に割り込めなかったのですが詳細は大変気になります、でもそれよりも!


私が総毛立ったのは『海鳴り街道』!
「玩具フィルム」と銘打たれ上映1分弱だったのでナメていたのが本当に恥ずかしい。
圧巻。
伊藤大輔を脱臼させたと(『丹下左膳』や『薩摩飛脚』からして)現在では目されているかもしれない山中貞雄が、ガチで大活劇に挑んでいる。西山監督が「唯一無二」と評した『百万両の壺』の道場シーンを超える存在を予感させる、濃厚な68秒。
現在商業映画で垂れ流されている、本編を観る気が失せるクサレな予告編とは世界を異にする、「血湧き、肉踊る」序章。
入場料の数百倍の価値があることを「やみシネ」が保証致します。是非是非是非お立会い下さい。